キミは甘のじゃく
私はおっかなびっくり書斎に入ると興味本位で本棚に置いてあったタイトルを目で追った。
経済学、機械工学、マーケティング……。
様々な分野の専門書が未分類のまま雑多に本棚に突っ込まれている。
おじいさんに代わって古賀電機を引き継ぐ。その覚悟の証のような部屋である。
「この本、全部古賀くんの?」
「まあな」
デスクの上には殴り書きのメモと、作成途中と思しきプレゼン資料が開きっぱなしのパソコン。
……彼がこの部屋で日夜何と闘っているのか見て取れる。
「随分、頑張ってるんだね……」
「別にこれぐらい大したことない。じいさんに認めてもらわなきゃ意味ないからな」
(すごいな、古賀くん……)
私なんて、なんとなーく就職して、なんとなーくOLしているのに。
自分のやりたいことを決めて、目標に向かってひた走る情熱はそれだけで尊敬に値する。
古賀くんにこれほどの情熱が眠っていようとは……知らなかった。