キミは甘のじゃく
「はい、これ。お弁当」
先に出勤する古賀くんに張り切ってこさえたお弁当を渡すと訝しそうに眉を顰められる。
「この弁当、ちゃんと食べられるのか?」
「……要らないなら返してよ」
本当に口の減らない人なんだから!!
せっかく早起きして作ったっていうのにひどいじゃない!!
「まあ、よく分かんねーけど、もらってく」
ぷりぷりと怒り出した私の相手が面倒になったのか、古賀くんはそれ以上迂闊なことは言わず弁当箱をさっと小脇に抱えた。
「いってらっしゃい」
「……おい」
今日も頑張ってねーと手を左右に振っていると、ちょいちょいと手招きをされる。
トコトコと傍に近寄ると、グイッと顎を上に持ち上げられた。整髪料の匂いが鼻をくすぐり頬に唇があたる。
……いってらっしゃいのキスだ。
「こっちの方はちっとも学習しねーなあ……」
ペシペシと頬を軽く叩かれお仕置きとばかりに鼻をつままれれば、あとは平謝りするしかない。
「しゅびばしぇん……」
結婚以来、キス魔と化した古賀くんの甘い波状攻撃にノックアウト寸前になる。