キミは甘のじゃく

**********

「……まあまあだった」

帰宅直後おざなりな感想とともに弁当箱を返すと、古賀くんはお風呂に入りに行った。

まあまあって……。

(もうちょっと他に感想はないわけ……?)

美味しかったとか、また作ってくれとか。

お褒めの言葉とか、ねぎらいの言葉を古賀くんに期待しても仕方ないのだろう。

ため息をつきながらお弁当箱の蓋を開けると、意外な光景が広がっていた。

(全部綺麗に食べてる……)

お弁当箱の中には米粒ひとつ残されておらず、正真正銘の空っぽである。

蓋の裏についた米粒を箸で摘まんでいる様子を思い浮かべると、思わず笑みが零れる。

(素直じゃないんだから……)

それでも、空っぽのお弁当箱を見て悪い気はしなかった。

なるほど!!これが例のあまのじゃくってやつなのか!!

かすみの言っていたことに急に合点がいって、ポンと手のひらを打つ。

ということは、まずまず気に入ったってことかしら?

お弁当の成功に味を占めた私は、引き続き内助の功作戦の実行に励むのだった。

< 81 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop