キミは甘のじゃく

古賀くんの会社――古賀電機の本社までは地下鉄に20分ほど乗り、有名なオフィス街のある駅で降りる。

摩天楼を構成する高層ビルが立ち並ぶ中心地、そのひとつが古賀電機である。

待ち合わせ場所であるエントランスロビーには見慣れたスーツ姿の古賀くんの他にもうひとり男性が立っている。

「悪いな、わざわざ」

「ううん。気にしないで」

そう言ってバッグから頼まれていた茶封筒を取り出して、古賀くんに渡す。

「ほら、木橋」

古賀くんは受け取った茶封筒をそのまま隣に立っていた人物に渡した。

しかし、木橋と呼ばれた男性は茶封筒を受け取らず、代わりに私の両手をガシっと握った。

「どうも~初めまして!!古賀さんの部下の木橋と申しま~す!!」

人懐こい笑みでぶんぶんと手を上下に揺らされる。

木橋さんって元気の良い人ね……。

「どうも……。妻のさくらです……」

古賀くんの眉が吊り上がっていく気配をそこかしこに感じながら自己紹介をする。

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