キミは甘のじゃく
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前日に荷造りを終え夜更かしせずにたっぷり睡眠もとって、旅行当日はいつもよりうんと早起きをした。
古賀くんの運転する車は高速道路をひた走り、出発から3時間ほどで目的の温泉旅館に到着した。
「うわあ、いい景色!!」
宿泊するお部屋に着いた途端、私は手を叩いてはしゃいでしまった。
部屋からの眺望は最高だった。
眼下に広がる景色は絶景そのもので、窓の外にはヒノキ造りの大きな露天風呂が並々とお湯を湛えていた。
「女は本当に温泉が好きだよな」
「いいじゃない。たまにはお湯に浸かってゆっくりしようよ」
“いかにも”なハネムーンはさすがに気が引けて、気軽に行ける温泉地を選んで正解だった。
子供連れの家族や老夫婦が多く、2人であることを妙に意識せずに済みそうである。
唯一の計算違いといえば古賀くんが露天風呂付のお部屋を予約したことだが……。
「そうだな。たまにはゆっくりするか」
“ゆっくり”がどんな意味を持つのか、押して図るべし。
結婚以来、どうも調子が悪いのはひとえに古賀くんのせいだ。
冷え冷えの仮面夫婦になるはずが一転、これでもかとベタベタ引っ付かれることになったのだから。