キミは甘のじゃく
胡坐をかいている足には畳みの模様がくっきりと浮かんでいて、古賀くんは休みなく団扇で仰ぎ続けてくれたことがわかる。
額には冷たさの残る濡れタオルが置いてあった。ぬるくなったらその都度取り換えてくれたのだろう。
(優しい……)
古賀くんを優しいと感じ始めたのは、私があまのじゃくに慣れてきた証拠なのかもしれない。
「もっと素直になってくれればいいのに……」
そうしたら、私の古賀くんへの苦手意識も薄れるかもしれない。
「俺が素直になれないのはお前のせいだろ」
「どう……して?」
「俺はお前のことが……」
続きを聞こうと身動ぎすると、我に返ったのか古賀くんがふうっと息を吐いた。
「……あとは自分で考えろ」
考えろと言われても……。
分かんないから聞いたのに……。
(意地悪だ……わ……)
果たして古賀くんが素直になる日はやって来るのだろうか。それは、神のみぞ知ることだろう。
ふかふかの布団の感触と古賀くんの優しさが妙に心地よくて、私はそのまま深く寝入ってしまったのだった。