キミは甘のじゃく

「それにしても、いい風呂だなあ……」

頭にタオルを乗っけた古賀くんは噛みしめるようにしみじみと言った。

「ほら、見ろよ。月が綺麗だぞ」

見てみろよ、と面白い物を発見した子供のように無邪気に空を指差す。

……月なんか見ている心の余裕なんてありませんから。

出来ることならこのまま湯の中に身体を沈めてしまいたい。

「もうお嫁に行けない……」

「……お前はもう嫁にきてんだろが」

……そうでした。

心配するだけ無駄。とっくに手遅れなのである。

「責任は取ってやるからな」

妖しく笑う古賀くんの策略にまんまとのせられるように、ハネムーンの締めくくりに相応しい甘いキスをする。

夢中になり過ぎてこの日も軽くのぼせて、古賀くんに布団まで運んでもらったのは言うまでもないことである。

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