挨拶~ぼくらのことば~


僕が学生の頃はいつも僕の車で僕が運転していたけれど、卒業してからは彼女の車で彼女が運転する。

彼女の隣に座り僕はずっと景色を眺めていた。

彼女はながら運転は下手くそだからいつもお互い無言になっていたけれど、今回は一ヶ月も空いて会ったせいか、今日の彼女はえらく饒舌だった。


火の山公園に着くと、車内で途中のコンビニで買った弁当で腹ごしらえ。

いつもは彼女が作ってくれた弁当を食べるんだけれど、今日は寝坊したらしく手ぶらだった。


「卒論すすんでる?」
「うん、いいカンジだよ」
「そっか。よかった」
「ヒトシくんは仕事どう?」
「うん、大変だな。だけど、やりがいがあるよ」
「そうだよね、ずっと就きたかった仕事だったもんね」


この街で就職することも一度は考えたけれど、夢を叶えるように背中を押してくれたのが彼女だった。


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