國比呂少年怪異譚・第二夜
葵が言う。

「巫女本人である事には変わりありません。ですが、かんかんだらではないのです。あなた方の命を奪う意志がなかったのでしょうね。かんかんだらではなく、巫女として現われた。その夜の事は、彼女にとってはお遊戯だったのでしょう」

巫女とかんかんだらは同一の存在であり、別々の存在でもある…?という事らしい。

「かんかんだらが出てきてないなら、今あの子を襲ってるのは葵が言うようにお遊び程度のもんだろうな。わしらに任せてもらえれば、長期間にはなるが何とかしてやれるだろう」

緊迫していた空気が初めて和らいだ気がした。

Bが助かるとわかっただけで充分だったし、この時の國比呂の表情は本当に凄かった。

この何日かでどれだけBを心配していたか、その不安とかが一気にほぐれたような、そういう笑顔だった。

それを見ておっさんと葵も雰囲気が和らぎ、急に普通の人みたいになった。

「あの子は正式にわしらで引き受けますわ。坊ちゃんには後で説明させてもらいます。お前ら2人は、一応葵に祓ってもらってから帰れ。今後は怖いもの知らずも程々にしとけよ」

この後Bに関して少し話した後、國比呂は残り、俺達はお祓いしてもらってから帰った。

この家の決まりだそうで、Bには会わせてもらえず、どんな事をしたのかもわからなかった。

転校扱いだったのか在籍してたのかは知らんが、これ以来一度も見てない。

まぁ死んだとかいう事はなく、すっかり更正して今はちゃんとどこかで生活してるそうだ。

ちなみにBの親父は一連の騒動に一度たりとも顔を出してこなかった。

どういうつもりか知らんが。

俺とAも割とすぐ落ち着いた。

理由は色々あったが、一番大きかったのはやっぱり國比呂の姿だった。

ちょっとした後日談もあって、多分一番大変だった筈だ。

身内や家族ってのがどんなもんか、考えさせられた気がした。

それにこれ以来ウチもAんとこも、親の方から少しずつ接してくれるようになった。

そういうのもあって、自然とバカはやらなくなったな。

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