國比呂少年怪異譚・第二夜
「で、どうも最初からそのシャム双生児が生き残る様に、天獄は細工したらしいんです。他の奇形に刃物か何かで致命傷を負わせ、行き絶え絶えの状態で放り込んだ。奇形といっても阿修羅像みたいな外見だから、その神々しさ(禍々しさ?)に天獄は惹かれたんじゃないでしょうか」

「成程…」

「で、生き残ったのは良いけど、天獄にとっちゃ道具に過ぎない訳だから、すぐさま別の部屋に1人で閉じ込められて、餓死。そして防腐処理を施され、即身仏に。住職さんの言ってたリョウメンスクナの完成って訳です」

「リョウメンスクナって何ですか?」

神話の時代に近いほどの大昔に、リョウメンスクナという2つの顔、4本の手を持つ怪物がいた、という伝説に因んで、例のシャム双生児をそう呼ぶ事にした、と言っていた。

「そうですか…」

「そのリョウメンスクナを、天獄は教団の本尊にした訳です。呪仏(じゅぶつ)として。他人を呪い殺せる、下手したらもっと大勢の人を呪い殺せるかも知れない、とんでもない呪仏を作った、と少なくとも天獄は信じてた」

「その呪いの対象は?」

「…国家だと住職さんは言ってました」

「日本そのものですか?頭イカレてるじゃないですか、その天獄って」

「イカレたんでしょうねぇ。でもね、呪いの効力はそれだけじゃないんです。リョウメンスクナの腹の中に、ある物を入れて…」

「何です?」

「古代人の骨ですよ。大和朝廷とかに滅ぼされた(まつろわぬ民)、いわゆる朝廷から見た反逆者ですね。逆賊。その古代人の骨の粉末を腹に入れて…」

「そんなものどこで手に入れて…?」

「テレビや新聞とかで見た事あるでしょう?古代の遺跡や墓が発掘された時、発掘作業する人達がいるじゃないですか。当時はその辺の警備とか甘かったらしいから…そういう所から主に盗ってきたらしいです」

< 110 / 186 >

この作品をシェア

pagetop