國比呂少年怪異譚・第二夜
次の日、俺はCに電話をかけた。

CとSとは、田舎が同じだった事もあって、あの時のメンバーの中では一番仲が良かった。

C曰く。

Sが失踪してから1年ぐらい経ったある日、私の家にSの母親から電話があった。

あの日の事について話が聞きたいという。

で、近所の店で会って話をする事になった。

その時にSの母が語った話によると、実はSは失踪してから1ヶ月後には見つかっていたらしい。

場所は実家の近く(詳しいロケーションは聞いてない)。

ただ精神に異常を来していたので、学校や友達には失踪中という事にしておいたらしい。

私も黙っているように頼まれた。

なぜ失踪したのか、失踪中はどこで何をしていたのか、親や病院の人が訊いても何も答えない。

ただ一言、「ヒサユキ?ヒサルキ?」っていう名前を、一度だけ呟いた。

それで警察は、関係者の中にそんな名前の奴がいたかどうか、もう一度チェックしたらしい。

でも、居なかった。

Sはまだ病院に通っているけど、随分回復しているようだ。

会ってないけどSの母が電話をくれた。

だから私も、もう人に話してもイイかなって思った。

ただ、あの日の事について、Sは覚えていないのか、口にする事はないそうだ。

警察は私らにも『ヒサユキ?ヒサルキ?』って名前の奴の事訊いたのかな?

どうだっけ?

私には覚えがない。

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