國比呂少年怪異譚・第二夜
やがて最初に私の部屋に来た男が戻ってきました。

私の吐瀉物の方を見ています。

怒られるのか、と思い惨めさと恐ろしさで男の方から目を逸らしていましたが、急に男が顔を寄せてきたので、反射的に壁の方へ逃れました。

しかし、思いのほか勢いがあったせいで、壁で思い切り頭を打ってしまい、床に倒れてしまいました。

すると男は私の顔を覗き込んで、口の中に指を突っ込んでくるのです。

気持ち悪くて必死で抵抗しましたが、無理矢理口を開かされました。

男の指が口の中で何かを探すように動いています。

また吐きそうになりましたが、もう胃に何も残っていないのか、えずくばかりで何も出ません。

もう本気でイヤになって、口の中の指を噛むとサッと引っ込みました。

口の中にヌルヌルしたものが残って、それが生臭くて、その日は食事も喉を通りませんでした。

食事は2人目の男(車の運転手)が運んできてくれますが、運び終わると部屋から出て行きます。

私と最初の男の2人きりで食事をするのですが、私は手錠をかけられているので上手く食器が使えません。

それでも何とか両手でフォークを使って食べるのですが、遠くの皿には手が届きません。

そんな時は、男が私の方に皿を寄せてくれるのですが、どうやら男は口が利けないようで、時折唸り声のようなものを上げながら皿をこっちへ押しやってくれました。

男はフォークやスプーンを上手く使えないようで、やたらと手を使って物を食べます。

日本人ではないのかな?と思いましたが、もう1人の男が彼の事を、

「ヒサユキ」

と呼ぶ ので、考えを改めました。

食事の量は、2人分にしては多いと思ったのですが、不思議と全部食べられました。

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