國比呂少年怪異譚・第二夜
それからタカオ君をベッドに寝かせて、中年夫婦にお礼を言われながら帰った。

何でもタカオ君が大人しく寝たのは半年振りだったそうだ。

ちなみに、タカオ君の部屋は物凄い事になっていた。

物は多分危ないから片付けたのだと思うけど、壁中に切り傷や穴があった。

帰り道、あまりに意味が解らなかったので、トキコさんに『意味が解りません』と素直に言って、色々訊いてみたそうだ。

可哀想に、一緒に来ていたケイちゃんは、帰り道の途中で嘔吐していた。

好みの女の子の嘔吐姿なんて、あんまり見たいもんじゃないだろうね。

可哀相に、兄さん…。

「あんたは相当なモノをもってるね」

トキコさんにそう言われた。

どうやら、言い方は宗教や御祓いの流派によって変わるらしいが、『守護霊』や『気』などと言われているものらしい。

「そんなに良いんですか?」

兄さんが訊ね返す。

「いや、逆だ。最悪なんだよ、あんたの持ってるもの」

そう言われた。

「最悪って、それじゃ駄目じゃないですか」

「普通はな。だけどお前は普通じゃない。何でそれで生きていられるのか分からない」

トキコさんに言わせると、兄さんの持っている『モノ』というのが、相当酷いらしい。

実はケイちゃんが吐いたのも、兄さんがタカオ君を叩いた時に祟られたらしい。

まあ、色々訊きたかったのだが、あまりにケイちゃんの気分が悪くなってしまったので、トキコさんとケイちゃんは先にタクシーで帰った。

後日、トキコさんのお店で10万円も貰えた。

『中学生の背中を引っ叩いて10万円ならいいや』と思い喜んでいたらしい。

それから少しして、兄さんは留学した。

チャランポランなとこがある兄さん曰く、『自分探し』という名の放蕩。

まあ、結局戻って来たものの、仕事が無くキャリアも無く、今はフリーターをやりながら生活している。

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