國比呂少年怪異譚・第二夜
僕は必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。

祖父達が手を振ってる中で、変わり果てた兄が、一瞬、僕に手を振ったように見えた。

僕は遠ざかってゆく中、兄の表情を見ようと、双眼鏡で覗く。

兄は、確かに泣いていた。

表情は笑っていたが、今まで兄が一度も見せなかったような、最初で最後の悲しい笑顔だった。

そして、すぐ曲がり角を曲がった時にもう兄の姿は見えなくなったが、僕は涙を流しながらずっと双眼鏡を覗き続けた。

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