國比呂少年怪異譚・第二夜
「お前、ここまで人を踏み躙れるような人間になっちまったんだな。母さんがどれだけお前を想ってるか、何でわからないんだ」

親父はBを見ず、お母さんを抱き締めながら話してたそうだ。

「うるせえよ。てめえは殺してやろうか?あ?」

Bは全く話を聞く気がなかった。

だが親父は何ら反応する様子もなく、淡々と話を続けたらしい。

「お前、自分には怖いものなんか何もないと、そう思ってるのか」

「ねえな。あるなら見せてもらいてえもんだぜ」

親父は少し黙った後、話した。

「お前は俺の息子だ。母さんがお前をどれだけ心配してるかもよくわかってる。だがな、お前が母さんに対してこうやって踏み躙る事しか出来ないなら、俺にも考えがある。これは父としてでなく、1人の人間、他人として話す。先にはっきり言っておくが、俺がこれを話すのは、お前が死んでも構わんと覚悟した証拠だ。それでいいなら聞け」

その言葉に何か凄まじい気迫みたいなものを感じたらしいが、

「いいから話してみろ!」

と煽った。

「森の中で、立入禁止になってる場所知ってるよな。あそこに入って奥へ進んでみろ。後は行けばわかる。そこで今みたいに暴れてみろよ。出来るもんならな」

「おじさん、それは…!」

親戚の國比呂が思わず制止しようとするが。

「いいんだ國比呂君」

親父は話を引っ込めようとはしなかった。

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