國比呂少年怪異譚・第二夜
突然話を振られて戸惑ったが、俺とAは何とか詳しくその夜の出来事をおっさん達に話した。

ところが、楊枝のくだりで 、

「コラ、今何つった?」

いきなりドスの効いた声で言われ、俺達はますます状況が飲み込めず混乱してしまった。

「は、はい?」

「おめぇら、まさかあれを動かしたんじゃねえだろうな!」

身を乗り出し今にも掴み掛かってきそうな勢いで怒鳴られた。

すると葵がそれを制止し、蚊の鳴くようなか細い声で話し出した。

「箱の中央…小さな棒のようなものが、ある形を表すように置かれていた筈です。それに触れましたか?触れた事によって、少しでも形を変えてしまいましたか?」

「はぁ…あの、動かしてしまいました。形もずれちゃってたと思います」

「形を変えてしまったのはどなたか、覚えてらっしゃいますか?触ったかどうかではありません。形を変えたかどうかです。」

俺とAは顔を見合わせ、Bだと告げた。

すると、おっさんは身を引いて溜息をつき、國比呂に言った。

「坊ちゃん、残念ですがね、息子さんはもうどうにもならんでしょう。わしは詳しく聞いてなかったが、あの症状なら他の原因も考えられる。まさかあれを動かしてたとは思わなかったんでね」

「そんな…」

それ以上の言葉もあったんだろうが、國比呂は言葉を飲み込んだような感じで、しばらく俯いてた。

口には出せなかったが、俺達も同じ気持ちだった。

Bはもうどうにもならんってどういう意味だ?

一体何の話をしてんだ?

そう問いたくても、声に出来なかった。

俺達3人の様子を見て、おっさんは溜息混じりに話し出した。

ここでようやく、俺達が見たものに関する話がされた。

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