國比呂少年怪異譚・第二夜
「…えっ?」

俺とAは言葉の意味がわからなかった。

下半身?

俺達が見たのは上半身だけの筈だ。

「あの、下半身っていうのは…?上半身なら見ましたけど…」

それを聞いておっさんと葵が驚いた。

「おいおい何言ってんだ?お前らあの棒を動かしたんだろ?だったら下半身を見てる筈だ」

「あなた方の前に現われた彼女は、下半身がなかったのですか?では、腕は何本でしたか?」

「腕は6本でした。左右3本ずつです。でも、下半身はありませんでした」

俺とAは互いに確認しながらそう答えた。

すると急におっさんがまた身を乗り出し、俺達に詰め寄ってきた。

「間違いねえのか?ほんとに下半身を見てねえんだな?」

「は、はい…」

おっさんは再び國比呂に顔を向け、笑みを浮かべて言った。

「坊ちゃん、何とかなるかもしれん」

おっさんの言葉に國比呂も俺達も、息を呑んで注目した。

2人は言葉の意味を説明してくれた。

「巫女の怨念を浴びてしまう行動は、2つあります。やってはならないのは、巫女を表すあの形を変えてしまう事。見てはならないのは、その形が表している巫女の姿です」

「実際には棒を動かした時点で終わりだ。必然的に巫女の姿を見ちまう事になるからな。だが、どういう訳かお前らはそれを見てない。動かした本人以外も同じ姿で見える筈だから、お前らが見てないならあの子も見てないだろう」

「見てない、っていうのはどういう意味なんですか?俺達が見たのは…」

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