甘い言葉の甘い罠


全国に名を馳せる、主要都市に確実に一店舗は存在するKISARAGI書店。
もちろん私の地元の都心にも規模は小さいながらあった。


5階建て。専門書から、コミックス、雑誌に至るまで、あらゆる在庫が各階にきっちり収められていた。


レジ横の検索機で入力すれば、どこにあるのか一目で分かるレシートが発券されるシステムを導入していた。


どこに行ってもない本も、ここならほぼ確実に手に入る。手に取って現物を確認できるのが強みだ。


もちろんナイロンカバーが掛けてあるけれど、試し読み専用の商品がある。


ネット通販も自由に使いこなせない年配の方や、学生の強い味方ではある。


5本の指に入るお得意様だ。
そして、その比較的首都圏にある大型書店で主任を勤めるのが。


「今日は何用ですか??忙しいんです。さっさと済ませてください」


と、仏様のような穏やかな笑みで毒を吐く、この男だ。



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