甘い言葉の甘い罠
そうしてよくわからない状況のまま、パーティーは終わり、解散になった。
今日は直帰だ。
「もうお帰りですか」
覚えのない声に振り返ると、背の高いまだ学生感の抜けない若者が立っていた。
「えっと、どちら様……?」
「来年就職内定の竹下君です」
ひとしきり落ち着いたのか、後ろから松嶋さんが声を掛けた。
「色々、ご指導、お願いします」
「あっ……はい。こちらこそ」
爽やかに柔らかな笑顔で会釈する。
今どきの女子にきゃあきゃあ言われそうなタイプだな。
幼さの残るイケメンだ。
「ご指導はお仕事だけにしてくださいね」
さりげなく毒を吐かれる。
「もっ、もちろんですよっ!人を遊び人みたいにっ」
遊んでるのはあなたでしょうと内心思いつつ少し動揺する。
―――まあ、イケメンだけど。
いやいやいや。
あり得ないから。
彼に失礼だ。