甘い言葉の甘い罠
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
翌朝。
その足で出版社に連れて行かれ、課長に事情が話された。
あくまでも内密にことを済ませたかったようで、事務所内で全てが行われた。
万引きした学生のようだ。
とんでもない冤罪を擦り付けられ、項垂れるしかない私は、悔しかった。
職場に連絡が行き、自宅で謹慎させられるはめになってしまった。
心配で様子を見に行ったことで疑われてしまうなんて。
しかも誰ひとり信じてくれないなんて。
「お大事に」
一緒に来た松嶋さんは、無表情にそれだけ言うと、仕事に戻るためにエレベーターに向かった。
―――悔しい。
悲しい。
エレベーターの手前でふと何かを思い出した松嶋さんが、角を曲がるとエレベーター通路の脇に向かった。
スマートフォンを取り出すと何かを調べ始める。
「あの…?」
「あった、やっぱりここだ」