甘い言葉の甘い罠
どうしよう
どうしよう。
どうしよう。
「あの、えっと…」
体温だけを感じる。
真っ暗でどっちに向いているのかもわからない状態で。
―――暖かい。
そして、心臓の鼓動だけが響く。
気づかれてはいけない。
そう思えば思うほど、私の鼓動が大きくなる。
「…あの…」
「…よくあることなんですか?」
「えっ?」
「エレベーターの故障」
「えっ?あっ、いえ。私の記憶する限り……あっ、そういえば先月にもあったと聞いてます」
「ちゃんと点検されてます?」
こんなときでも冷静だ。
なんだか無性に悔しさと虚しさが押し寄せてきた。
「してるはず、ですが」
「へえ……」