甘い言葉の甘い罠


どこにでもいる普通の容姿。
これだけはと手入れを欠かさない背中まで伸びた黒髪ストレート。とくに自慢するチャームポイントもなし。


高校生の頃は思春期で、田舎が嫌で。本が好きだった私は市内の大学に行き。


たまたま校内に貼られた就職案内の見つけた出版社にかじりつく想いで、第二志望も第三志望も持たず。


めちゃくちゃ緊張して頭が真っ白になりながら受けた面接。
何を話したのかも覚えていない。


都心にある大手出版社に採用されたときには天にも昇る気持ちだった。


指導係りになった、そこの2年先輩の富浦さんと歓迎会をきっかけに急速に親しくなったのは、勘違いではないはずだ。


2人きりでお食事したり、書店を巡ってみたり。


「それって、営業じゃあ…」


「ちち、違うからっ!!……たぶん」


同期に言われても全力で否定した。
認めたくなかった。


お酒だって飲みに行ったし。


< 4 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop