甘い言葉の甘い罠
その間に、聞かれることもあった。
「深幸ちゃんてどんなところに住んでたの??」
元もとは歓迎会の席で、お酒を勧められ。今までお屠蘇以外飲んだこともないのに、浮かれてしまった。
キラキラした笑顔で優しく微笑みかけられ、とろけそうになりながら。
「あっ、えっと。N県の郊外で資産家の祖父の家で遊んだことがあります」
咄嗟に。
見栄を張ってしまった。
幼稚園ぐらいのとき。今はもう縁のなくなった、遠い遠い、果てしなく遠い親戚の知り合いのお家だ。
嘘ではない。
いや、嘘と言うよりは、それはすでにただの他人と表現した方が近い。
でも。あんなど田舎の出身だとバレたらきっとバカにされて話し相手にすらしてもらえないと思った。
「へえ??すごいじゃん。今度招待してよ」
「あっ、はい!!ぜひ、そのうちに」
今思えば、その嘘から積極的に誘われるようになったんだよな。