心ときみの物語
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それから数日が経って、降り続いていた雪が嘘のように高嶺神社は日常を取り戻しつつあった。
「あ、エニシさま!暇なら手伝ってくださいよ!雪の下に埋まってた落ち葉がこんなにたくさんあるんですから」
小鞠はだれに言われたわけでもなく、勝手に竹箒で掃除をしている。
「どこをどう見たら俺が暇に見えるんだよ」
大あくびをしながら自然とまた社務所に置かれたおみくじの箱に手が伸びた。そして予想どおり小鞠も「あ、ズルいです。私もー」と100円を入れて1枚を引く。
小鞠はまたカラカラと一番下から。俺は逆に一番上からから。それを同時に開いて、小鞠がニヤリと笑った。
「私また大吉です!エニシさまは?」
「………」
「どうせまた小吉だったんでしょう?私の運を分けてあげてもいいですよ」
上から目線の小鞠の頬を摘まむと「いててて」とその手足をジタバタとさせた。そんなじゃれあいをしている中、小鞠が俺のおみくじを盗み見した。
「あ、エニシさまも大吉じゃないですか!」
落ちる一方?誰だ、そんなことを言ったのは。
落ちたっていいじゃないか。その先に絶対壊れない支えさえあれば、いくらだって這い上がれるのだから。