心ときみの物語
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1937年。昭和12年の初夏に小鞠と進は出逢った。進は当時10歳でまだ表の高嶺神社が建設される前のこと。
近所の人しか知らないようなこの神社に通い、
いつも元気な足音をいつも小鞠は聞いていた。
そんな日々が続いたある日。台風の接近によりひどく辺りは大荒れで。そんな中でも進はまた神社に来て、それはそれは熱心に神頼みをしていたらしい。
なにをそんなに願っているのだろうと、小鞠は不思議に思ったけど石像のままその背中を見送った。
しかし次の瞬間。タッタッと足音が戻ってきて、進は自分の手に持っていた傘を狛犬である小鞠の頭に乗せた。
『雨で冷たいでしょうから、僕ので良かったらどうぞ』
その時、小鞠ははじめて人の暖かさを知って。
なにか恩返しがしたい、なにか役に立つことをしたいと、石像から形を変えた。
写真を撮ってもまだモノクロに写る時代。町並みも人々が住む家も現代とはまったく違うもので。その中を小鞠は人の姿で歩いて、なんとか進の家を見つけ出した。