心ときみの物語
『こんな冷たい川に入ったら風邪をひきますよ』
小鞠が川の側に脱ぎ捨てられていた進の洋服を掴もうとすると、『触っちゃダメ!』と進が〝らしくない〟大声を出した。
ビックリしてる小鞠に進は申し訳なさそうな顔をして、その洋服を奪い取った。
『う、うつったら大変なので触らないでください……』
だんだんと小さくなっていく声。
自分の体を洋服で隠すように進は握りしめて。
その露出している腕や足にも赤い発疹が出ていた。
小鞠は迷わずにその手に触れてニコリと笑った。
『私は大丈夫ですよ。だからそんなに怯えないでください』
大塚進は麻疹(ましん)という流行り病に感染していた。今の言葉で言うと〝はしか〟だ。
まだ医療の技術が進歩してなかった時代には〝麻疹は命の定め〟と呼ばれるほどの病気だった。そして感染したら必ず命を落とすと、その空気感染をみんなが恐れていた。