心ときみの物語
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小鞠はその次の日から、進の元へと通うようになった。相変わらずその正体を伏せたまま。
『本当に僕といて大丈夫なんですか……?』
東側の隔離された部屋。
進は家族が感染しないようにここで寝泊まりをしていた。食事は時間になると扉の前に置かれていて。麻疹にかかってから一度も家族とは顔を合わせていなかった。
『大丈夫ですよ!私は丈夫だけが取り柄ですからね』
進の家族にバレないように外の窓から小鞠は部屋に入っていた。
『でも麻疹は感染力が強くて……』
『平気です!私を信じてください!』
それは嘘ではなく小鞠に人の病がうつることはなかった。でも正体を知らない進は同じ部屋にいることさえも怖がって、ずっと片隅で膝をかかえるだけ。
『進さんはうつしてしまうことが怖いですか?』
『あ、当たり前だよ!僕のせいでみんなが死んでしまうかもしれない……。だから神社にお祈りに……』
『ああ!熱心にしていた願いごととは〝病が治りますように〟だったんですね』
『え……?』
しまった、と小鞠は慌てて口を塞いだ。