心ときみの物語
それから小鞠は毎日進に会いにいった。
あやとりやお手玉など部屋で遊べそうなものはなんでも持っていった。それでも進の麻疹はひどくなるばかりで、症状が悪化してきた頃から進は自ら外に出ることを控えていた。
窓から見える太陽が沈みはじめると、進は決まって寂しい顔をした。
『進さん、私になにかできることはないでしょうか』
病を治す力がない自分がもどかしかった。
『小鞠さんが来てくれるから僕は毎日楽しいよ。もう誰かと話をするのはムリだって思ってたから本当に嬉しいんだ』
心がぎゅっとなって、人の姿になるようになってから随分と色々な感情を感じるようになっていた。だけど進に対する感情は他のものとは違う気がした。
『進さん。私少しだけ病のことを調べたんです。まだ日本では実績がありませんが薬草といって、草の持つ効能を利用して病気を治す方法があるみたいなんです』
『薬草……?』
『少し歩いた場所に山菜などが取れる山があるんですけど、恐らくそこに行けば……』
そう言い終わる前に進が小鞠との距離を縮めて、その手を強く握った。
『本当に僕の病を治す方法があるの?』
その顔は希望を取り戻したようにキラキラとしていて、小鞠が『可能性は……』と言いかけた時。
自分の体に違和感を感じてそっと確かめると、ふさふさとした犬の尻尾が生えていることに気づいた。しかも次は前頭部のほうがムズムズとする。