心ときみの物語
そして次の日。朝早く進の家へと向かうとすでに進は外で待っていた。その顔は期待と不安が混ざりあったような表情をしていて、小鞠はいつものように元気に声を出した。
『進さん、おはようございます!』
『しー!家族が起きちゃうよ』
『す、すいません』
まだ田畑を耕したり道を歩く人はいなくて、進は安心したのは少しはや歩きだった。
『んー!外の空気は久しぶりだなあ。ずっと背筋を丸くして生活してたからこんなに両手を伸ばしたのも久しぶり』
進の発疹はもう顔以外の箇所に広がっているけど。それを好奇な目で見る人はまだいない。
『私も進さんと外を歩けて嬉しいです』
思えばこんな風に誰かと肩を並べたのは初めてだった。
『雲行きが怪しいけど大丈夫かな?傘を持ってきたほうが……。あ、でも僕の傘は……』
傘という単語に小鞠の胸が跳ねる。
進の傘はまだ小鞠が借りているままだし、ここで余計なことを言ったら動揺してまた形が崩れてしまうかもしれない。
『て、天気が悪くなる前に薬草を見つけて戻ってくれば大丈夫ですよ!ほら、取ってくる薬草の名前もばっちりです』と、話を反らしながら小鞠は紙を出した。