心ときみの物語
そこには麻疹に効果があると言われる薬草の名前。
ナス科のイヌホウズキや、アカザ科のジフシ。
それからシイ科植物のシイなど。その特徴を小鞠は間違えないように絵まで書いていた。
『ぷっ……』
それを見て進が吹き出す。
『なぜ笑うのですか?』
『だって絵が下手……くく』
『ひ、ひどいですよ!頑張って書いたのに』
『分かってます!分かってます!そんなに怒らないでくださいよ』
ふたりの距離は出逢ったころに比べるとかなり縮まった。他の人と関わることが許されない進と、だれかとこんな風に関わることを夢見ていた小鞠。
互いに深く共存し合って、互いに孤独を知っていた。だからこそ大切に想う気持ちはなによりも強かった。
『小鞠さん』
山を登りはじめて30分。まだ残念ながらひとつも見つかっていなかった。
『ん?なんですか?』
その懸命に探す後ろ姿を愛しそうに見つめる進の顔を小鞠は知らない。
『もしこの先小鞠さんに困ったことがあったら、次は僕が小鞠さんを助けますね』
『え?』
『だって僕たちずっと友達でしょ?』
進があまりに素敵な顔で笑うから、小鞠は少し目を奪われてしまった。それと同時に絶対に薬草を見つけたい気持ちが強くなる。