心ときみの物語
出逢いとか幼少の思い出を聞いてもないのに喋ったあと、佳苗は目を伏せてぼんやりとうつ向いた。
『……雪乃、来月遠くの街に引っ越すことが決まってて。ずっと一緒だったから寂しくて寂しくて』
そう言って佳苗はまた大粒の涙を流した。
そんな佳苗の背中を小鞠が擦り、俺は壁に寄りかかってあぐらをかいていた。
『んで?その寂しさに耐えられないから縁を切ってほしいと?』
佳苗は申し訳なさそうにコクリと頷く。そんな佳苗を見て俺の返事は……。
『バカじゃね?』
言った瞬間、なぜか小鞠がキレて『最低!』と近くにあったティッシュ箱を俺に投げてきた。
これだからゆとりは、って言いたくなるような安易な考え。でもそんなゆとりでも懸命に生きてるってことは伝わる。
『とりあえずもう一度よく考えろ。それでも考えが変わらないって言うならお前の願いを叶えてやるよ』
そう言い放って2日後。
なんの嫌がらせか知らないが、今度は椎名雪乃が縁切りの絵馬を掛けにきやがった。
――『久しぶりじゃないですか?立て続けにふたりも依頼がくるのは』
なんて、小鞠がドヤ顔していたのは置いといて。
まあ、俺の感想はただただ面倒くさい。