心ときみの物語
「あのさ、これは〝エニシさま〟としてじゃなくて、普通の大人からの意見なんだけどさ」
俺は重い腰を上げて、ふたりに近づいた。
「依存なんて言葉を使うから重苦しくなるんじゃねーの?」
そんなの使うのは10年先でいいだろ。
16歳の高校生なんだから、もっとストレートで、もっと簡単な言葉がある。
「普通に大切な存在でいいじゃねーか。いなきゃ困る、いてくれなきゃ寂しいって、それでいいじゃん」
「………」
「お前らが願いを書かなきゃいけないのはここじゃない。縁結びのほうだろ」
縁を切るなんて一瞬だ。
相手との思い出の重さなんて関係なく。スパッと切れ味のいい包丁のように容易く縁切りはできてしまう。
だから何年もかけて結んできたこいつらの縁を切ってやるなんて、後味が悪くてやってられねーってこと。
「もうほどけないように固く結んでくるんだな。言っておくけどあっちのご利益は本物だ。一度結んだ縁はなにがあっても切れない」
俺の言葉にふたりが顔を見合わせる。
「だから安心して参拝してこい」
こいつらのことは結びの神様に任せておけばいい。
俺は寝る。だからもうこいつらとは関係ない。