心ときみの物語

ふたりはやっと間違っていたことに気づいたのか、手を繋いでまた泣いていた。


「ごめんね佳苗」

「ううん。私もごめん」

幼いからこそ間違える。

そして、誰にも言えない悩みはいつしか大きくなって、目に見えない神様を信じたくなる。

何度も言うが俺は神でも仏でもない。

だから導く力もないし結ぶこともできない。
できるのは縁を切ってやることだけ。

でも、俺にだって、切ってやりたくない縁もある。


「ありがとうエニシさま」

「……あれ?エニシさま?」

ふたりがキョロキョロと周りを見渡していた。


「おかしいね。いなくなっちゃった。もしかしてお礼言われるのが恥ずかしくて逃げたんじゃない?」

「あーありえる。素直じゃなさそうだもんね」

てめえらに素直じゃねーとか言われたくねーし。とか、反論してもどうせ聞こえない。

ふたりは笑顔で石段を降りていって、俺はその後ろ姿を見つめていた。


「良かったんですか?」

隣で小鞠がひょっこりと顔をだす。


「依頼者とエニシさまの縁が切れるとエニシさまの姿が見えなくなるって言わなくて」

「言おうと思ったけど、あいつらがぺちゃくちゃうるせーから」

俺は役目が終わって本殿のほうに歩きだした。


「でも、騒がしい女子高生嫌いじゃないでしょ?」

「まあな」

そして椎名雪乃と橘佳苗は高嶺神社の縁結びの絵馬に同じ言葉を書いて奉納した。


――〝離れてもずっと親友でいたいです〟

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