心ときみの物語
とりあえず拝殿の中へと招くと淳平は物珍しそうに部屋を見渡している。
「どうぞ」
コトッと小鞠がテーブルにお茶を置いた。
「ああ、すいません!お気遣いなく……あれ?あなたは確か絵馬を渡してくれた……」
その言葉に小鞠はニコリと微笑む。
営業スマイルかよ。またファンを確保しようとしてんのか?やっぱりしつけが必要だな。
「あー!そうだ、すいません!申し遅れましたが私はこういう者です」
もやしのような体型なのに声だけは無駄に張るヤツだ。しかもご丁寧にカバンから名刺を出して俺に渡してきた。
そこには電気メーカーの会社名と営業と書かれた部署。
「実はエニシさまにお願いがありまして……」
淳平が正座のまま姿勢を背筋を伸ばす。
「その前にあのテレビ調子が悪いんだけど見てくれない?」
ちょうど同じメーカーだし、いい場面で砂嵐が起きるからイライラしてたところだった。
「ちょっとエニシさま!」
「うるせーな。ついでだよ。ついで」
小鞠の小言を聞き流していると淳平は嫌な顔ひとつせずに「喜んで!」とテレビをチェックしてくれた。