心ときみの物語
良く言えばいい人、悪く言えばいい人すぎるってことだけはこの短時間でなんとなく分かった。
淳平がガチャガチャとテレビを見てくれている中、小鞠がこそっと俺に耳打ちをする。
「あの方に絵馬を渡したのは1週間前なんです。てっきり決心が変わってもう来ないと思ってたんですけどね」
縁を切る目的ではなく絵馬だけを持ち帰ろうとするヤツもいる。まあ、ただ黒く塗り潰してるだけだし、持ち帰ったところでなんの効果もないけど。
そういう冷やかしの客はちゃんと見定めろって小鞠にはきつく言ってあるから、小鞠の目から見て淳平は絵馬が必要な人間に見えたんだろう。
「エニシさま。一応テレビを一通りチェックさせていただいたんですが……」
腕捲りをした淳平が俺のところに来た。
「テレビ自体に故障や不具合は見つかりませんでした。おそらく電線の接続のせいかと……」
「ほら!エニシさまが無理やり電気を引っ張ってきたせいですよ」
「………」
また小鞠の小言がはじまりそうだったから、俺は淳平にお礼を言って再び座らせた。