心ときみの物語
淳平と清香は付き合って1年になる恋人同士。
ふたりとも同い年で年齢は28歳。
出逢いはなんでもケーブルテレビの契約の営業で、淳平が清香の家を訪ねたのが始まりだったらしい。
清香はインターホン越しに断る他の客とは違い、詳しく話を聞きたいと家の中でお茶まで出してくれたんだとか。
30件連続で断られた淳平にとって、女性のひとり暮らしの部屋とオシャレなローズマリーの紅茶ってだけで、一瞬で恋に落ちてしまったんだと。
はい、めでたしめでたし。
「ちょっと!エニシさま聞いてます?」
淳平が寝落ちしそうな俺の肩を揺すった。
「あー聞いてる聞いてる」
長々と初デートや手を繋いだ時の興奮まで話始めるから、危うく寝るところだった。
「それでお互いにそろそろ結婚したいねって話になって、清香さんの実家に挨拶に行ったんです」
「……ふあ」
「って、エニシさま本当に聞いてます?」
うるせーな。あくびしながら聞いてるよ。
とりあえず恋愛絡みってことは分かった。あと前置きが長いってことも。
「だからアレだろ。土壇場になって彼女に婚約破棄されたんだろ?お前頼りなさそうだもんな」
「はは、違いますよ」
「………」
なんか鼻で笑われた気がするけど、気にしないことにしよう。
「じゃあ、なんで彼女と縁を切りたいんだよ?」
「実は……」