心ときみの物語

着いたのは小高い丘の上にある一軒家。その門の前に立って俺は唖然としていた。


「嘘じゃなかったでしょう?」

「マジか……」


清香の実家は学園ドラマに出てきそうな豪邸で。白地の外壁に鉄格子付きの窓。そして日本庭園の庭には池があって、そこには鯉が泳いでいる。

――『実は……彼女の家がビックリするぐらいお金持ちで。挨拶に行っても使用人の方がインターホン越しで対応するだけで中に入れてもらえなくて』

使用人なんて嘘つくんじゃねーよって言ったけど、こんな豪邸なら使用人のひとりやふたりいる。いや、いなきゃおかしい。


「じゃあ、家の中に入ったことはないんだ?」

俺たちはまだ門先で止まったまま。


「いえ、最初は取り次いでもらえなかったんですけど、めげずにそれから何度も行くようにしたら、ついに清香さんのお父さんに会うことができまして……」

「へえ。んで?」

「1回目は挨拶しても無視。2回目は帰れと水をかけられて、3回目は娘と別れろと殴られました」

「うわあ……」
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