心ときみの物語
「駆け落ちぐらい男なら一緒にしてあげたらいいんですよ」
小鞠は頬をむくっと膨らませてブツブツと言っていた。
「簡単に言うなよ。駆け落ちだぞ?そう言われたら男は大抵ビビるって」
「まったく男は度胸がないですね」
「なにから目線だよ?」
「女子はしてもしなくても「うん」と二つ返事さえしてくれたら安心するんですよ」
「いや、だからなんでお前が女子代表みたいになってんの?」
きっと俺に隠れて恋愛ドラマを見てるからそれで覚えたんだな。本当に体は小さいくせに口だけは減らないから困る。
俺は再びテレビへと視線を変えて、清々しいほどのせんべいの音を部屋に響かせた。
さて、どうしようか。
月が自己主張を終えるころ、東の空が白藍(しらあい)に染まって太陽が顔を出せば朝がくる。
そして俺はまた淳平に会いにいった。