心ときみの物語
風に乗って届いた言葉はすぐに空へと消えて、
ざわざわと騒ぐ胸の鼓動だけを置いていく。
俺はその動揺を顔には見せずにさらりと質問に答えた。
「俺は23だぞ」
だからあるに決まってると、鼻で笑ってみせた。
「モテそうですもんね」
「え、マジ?俺がいい男に見えんの?」
「見えますよ。背が高くて男らしくて、羨ましいです」
褒められるのに慣れてない俺はすぐに上機嫌。
こいつめっちゃいいヤツじゃん。友達になれそうだよ。
「僕は今の彼女に出逢ったのは27歳の時で。恥ずかしいですが付き合うのも初めての経験で。まったく女性と関わりのない生活をしていたので人を好きになったのも……」
「ふーん。初恋か」
「はい。27歳で」
淳平は少し気まずそうにポリポリと顔を掻いた。
「彼女は完璧な女性で、きっと僕じゃない別の人がすぐ見つかると思うんです。家族からも歓迎されて祝福されるような相手が」と、言ったところで淳平が言葉に詰まる。
次にポリポリと顔を掻いたのは俺。
大通りを軽自動車やトラックが走り去る中、それにかき消されないように声を出した。
「淳平、自分の欠点言ってみろ」