心ときみの物語
「えっと、頼りなくて男らしくなくて。優柔不断で、周りに気を遣いすぎて。あ、あとすぐ騙されます。それから断れない性格というか、学生時代はずっと学食のパンを買ってくる係でした」
それは驚くほどスラスラと。
探せば出てきそうな欠点に淳平は「えっと……」とまだ絞り出そうとしている。
「そういうのなんて言うか知ってるか?」
「お人好し……ですか?」
「じゃ、ああいうのも放っておけないんだろ?」
俺が指さした方向には横断歩道のボタンを背伸びしながら押そうとしている黄色い帽子の女の子。見た目は小学1年生ぐらい。
それを見て淳平は慌てて、女の子のほうへと駆け寄った。
代わりに押してあげた信号はすぐに赤から青へと変わって。淳平が女の子に手を差し出した。
「危ないから手を繋いで渡ろうか。怪しい人じゃないからね」
そう言って無事に女の子を横断歩道の向こう側へと送り届けた。
その様子を見ていた俺も信号が変わる前に向こうへ行こうとしたけれど、〝ある姿〟を発見して足はピタリと止まった。