心ときみの物語
「――淳平くん!!」
茶色い髪に水色のシャツワンピース。タッタッタッと靴音を響かせて走ってきたのは……。
「き、清香さん……」
そう、沢城清香だった。
清香は淳平の前で止まって、ぐっと綺麗な顔とは不釣り合いな強い目をした。
「淳平くん、ごめんなさい」
なぜか瞳を潤ませて頭を下げる。
淳平はきっと別れ話か、もしくはいよいよ自分がフラれるのだろうと、察したようなそんな顔をしていた。
「駆け落ちなんて……そんなバカなことを言って、ごめんなさい」
「……ううん。清香さんはバカじゃないよ」
震えるその肩に淳平は触れようとしたけど、寸前で手は止まった。
「清香さん聞いて。僕は頼りないし、忙しさとは比例しないほど給料も少ない。だからお父さんが反対する気持ちは正しい。僕なんかよりもっと清香さんには……」
「なんで淳平くんはいつも自分の欠点ばかりを見つけるの?」
清香はそう言って、迷っていた淳平の手をぎゅっと握った。