心ときみの物語
3話 父ときみと愛情と
今日も人々は色々な願いを抱えてここにやってくる。
その願いを手のひらで合わせて、目を瞑り心で唱える。
自分のため、誰かのため。
小さなこと、大きなこと。
欲望、願望、切望。
きっと誰もが、目に見えない存在に想いを託す。
ここは高嶺神社。
――別名、縁結びの神社。
境内の木々にピンク色の桜が咲くと、仲のいい親子連れが手を繋ぎながら神社を訪れる。
空を指さして「綺麗だね」と笑って。
幸せの象徴、幸せの形。
その笑い声が響く中、今にも吠えそうなほど険しい顔をした少女がひとり。
「こんにちは。なにをお探しですか?」
熨斗(のし)で結ばれた長い黒髪をなびかせながら、巫女はニコリと少女に向かって微笑む。
「あの……〝裏絵馬〟って本当にあるの?」