心ときみの物語

***


「暇ですね」

外は憎たらしいほどの青空。

爽やかな風の中で鳥たちも優雅に飛び回ってる中、今日も俺はこの拝殿の狭い箱の中でテレビを鑑賞中。 


「たまには遊びにいけ。友達いねーのかよ」

小鞠はずっと隣で退屈そうな顔をしていて、こっちは楽しんでるっていうのに気が散って仕方がない。

「友達ぐらいいますよ!エニシさまこそ友達いるんですか?」

「俺はテレビとせんべいが友達だ」

「うわ……」

「その哀れんだ顔やめろ」

結局、小鞠が暇だ暇だとうるさいから外へと出掛けることにした。といっても表の高嶺神社の敷地内に行くだけだけど。


「天気がいいですねー」

「んー」

それでも小鞠は満足そうにしていて、パラパラと舞う桜の花びらを手のひらに乗せて遊んでいた。

俺は賽銭箱の隣にある大きな柱に寄り掛かって大あくび。ここにレジャーシートでも敷いて昼寝をしたい気分。

そんな中、鳥居の向こう側から可愛らしいピンク色の靴を履いた小さな女の子が走ってきた。

本殿まで続く道の真ん中は神様の通り道だと知っているのだろうか。その足は少しだけ端を歩いて、参拝所へ一直線。

鈴乃緒を鳴らして二礼二拍一礼。そして、なにを願っているのかとても長い間目を瞑っていた。
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