心ときみの物語
「あ、小鞠ちゃん!」
願いを言い終わったあと、女の子は親しげに小鞠の名前を呼んだ。
嬉しそうに駆け寄って、どうやら小鞠に友達がいたというのは本当だったらしい。というか、なんでそんなに仲良くなってんの?ルール違反じゃね?
そんな視線を送り続けても小鞠は無視。「そのピンクの靴可愛いねー」なんて言いながら知らん顔だ。
「まゆか!ひとりで勝手にウロウロしたらダメだって言ったでしょ!」
境内に響くもうひとりの声。
「あ、お姉ちゃん!」
「もう危ないから手を繋いでようって約束したでしょ?」
「ごめんなさい。でもまゆかね……」
「でもじゃないの」
少女はまゆかの手を引いて、傍にいた小鞠に小さく一礼する。小鞠は微笑みながらそれに応えて、すぐにふたりは神社の外へと歩いていった。