心ときみの物語
書いただけでは依頼は成立しない。
だから掛け所に絵馬をかけるのを黙って待ってやったのに変質者扱い。17歳のガキを襲うほど飢えてねーよ。
「あんた本当に噂のエニシさまなの?」
説明してもつぐみの不審な目は消えない。
「じゃあ、そういうお前は半信半疑のくせにこんなものに頼っちゃったんだ」
そう言って絵馬を指す。
本当かどうかも分からない。存在するのかしないのか。真実なのか嘘なのかどうかも定かじゃないのにそれに頼るしかない。
つぐみはそんな顔をしていた。
「とりあえず本気なら絵馬をそこにかけろ。もし迷いがあるなら絵馬を置いてさっさと帰りな」
「………」
つぐみが裏絵馬を受け取ってから神社の周りをウロウロしていたのは知っている。昼間も表の参拝所まで来たくせに絵馬はポケットに閉まったまま。
俺がわざときつい言い方をするとつぐみはムッと頬を膨らませて、乱暴に絵馬を掛け所に結んだ。
「これでいいんでしょ?あんたが本当にエニシさまなら私の願いを叶えてよ」