心ときみの物語
つぐみは現在三人暮らし。家族構成は父親とつぐみと妹のまゆか。妹との関係は昼間に見たとおり仲のいい姉妹。歳が離れているせいか少々まゆかに過保護気味だけど。
「ああ、はいはい。アレだろ。思春期真っ只中で父親と大喧嘩。あるよな。俺も何度も親父との縁を切ろうと……」
「は?全然違うし」
「………」
ものすごく冷めた顔をされたのは置いといて。
俺はため息をつきながら聞いた。
「じゃ、なんで父親との縁を切りたいんだよ?」
つぐみは終始不機嫌で、父親の名前を出すたびに表情を曇らせる。ぎゅっとスカートを握りしめる手を俺は見逃さない。
「決まってるでしょ。父親のことが……あいつのことが死ぬほど嫌いだから!」
つぐみの熱くなる気持ちとは反対にどんどん冷めていくお茶を俺はズズッと飲んだ。
つぐみはそのあと吐き出すように父親のことを話してくれた。
父親は現在無職でたまに日雇いの仕事をして食い繋いでいる状態。以前の父親は真面目で家族想いだったけど、2年前に最愛の妻を亡くしてから性格が一変したとのこと。
「毎日毎日酒ばっかり飲んで。なくなれば買ってこいって偉そうに命令して。なにかあるとすぐに物や私たちに当たり散らして家の中はぐちゃぐちゃ。もうこんな生活耐えられない……っ」
つぐみは何度も声を詰まらせた。