心ときみの物語


***

次の日俺はまた表の高嶺神社にいた。

平日だというのに遠方から遥々参拝に訪れる人もいて。自分の家のことながら暫くは安泰だなあ、なんて呑気に考えていると……「ゴボンッ」と隣で不自然な咳。


「たまにはお掃除でもしたらどうですか?」

小鞠は竹箒(たけぼうき)を持ちながら境内に落ちた葉っぱや砂ぼこりを掃いていた。

「外なんて掃いてどうすんの?すぐまた汚れるじゃん。ほら」

言ったそばからクスノキの葉がはらり。


「箒で掃くということは汚れを祓(はら)うという意味もあるんですよ。神社のご子息の方がそんなことも知らないんですか?」

「ばーか。知ってるに決まってんだろ」

そんなやり取りを小鞠としていると、またこちらに向かってくる軽快な足音。

「小鞠ちゃんっ」

赤いランドセルを背負ったまゆかは小鞠に抱きついた。

「学校はもう終わったの?」なんて、小鞠はすっかりお姉さん気分。「向こうで遊ぼうか」と小鞠がまゆかの手を引くと、その後ろから今度はつぐみが歩いてきた。


「よう。相変わらず仏頂面だな」

「うるさい」

こいつは俺のことなんだと思ってんのかな。神頼みしてきたのはそっちだろ。
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