心ときみの物語
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次の日俺はまた表の高嶺神社にいた。
平日だというのに遠方から遥々参拝に訪れる人もいて。自分の家のことながら暫くは安泰だなあ、なんて呑気に考えていると……「ゴボンッ」と隣で不自然な咳。
「たまにはお掃除でもしたらどうですか?」
小鞠は竹箒(たけぼうき)を持ちながら境内に落ちた葉っぱや砂ぼこりを掃いていた。
「外なんて掃いてどうすんの?すぐまた汚れるじゃん。ほら」
言ったそばからクスノキの葉がはらり。
「箒で掃くということは汚れを祓(はら)うという意味もあるんですよ。神社のご子息の方がそんなことも知らないんですか?」
「ばーか。知ってるに決まってんだろ」
そんなやり取りを小鞠としていると、またこちらに向かってくる軽快な足音。
「小鞠ちゃんっ」
赤いランドセルを背負ったまゆかは小鞠に抱きついた。
「学校はもう終わったの?」なんて、小鞠はすっかりお姉さん気分。「向こうで遊ぼうか」と小鞠がまゆかの手を引くと、その後ろから今度はつぐみが歩いてきた。
「よう。相変わらず仏頂面だな」
「うるさい」
こいつは俺のことなんだと思ってんのかな。神頼みしてきたのはそっちだろ。