心ときみの物語
「んで?昨日は一晩考えろって言ったけど考えは変わらねーのか?」
俺はさらりと話を戻す。
「一晩なんかで考えが変わるぐらいなら始めから頼みにきたりしない」
つぐみはまた険しい顔をした。
境内の隅っこではまゆかと小鞠が楽しそうに遊んでいた。まゆかの笑い声はケラケラと高らかにこっちまでよく聞こえる。
「親との縁切りなんてやめとけ。いい死に方しねーぞ」
依頼者の願いを叶えるのが俺の仕事。だけど縁切りにも種類があって特に親との縁切りは後味が悪い。
体の中にある血の繋がりは消えないのに、バッサリと表面上の縁を切ってしまうと切ったほうも切られたほうも歯車が大なり小なり狂う。
その意味を17歳のつぐみが分かっているとは思えない。
「もう限界なの。私はあいつとの縁を切ってまゆかとふたりで暮らしていく。あいつの娘だってだけで息苦しい生活はうんざり。だから早く縁を切ってよ」
そんな切羽詰まるつぐみを見て、俺は対等に返事をした。
「分かった。その代わりお前が言う限界を見てからだ。明日の学校終わりにまたここに来い」