心ときみの物語
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そして次の日。予定の時間よりも早めにつぐみは現れた。その右手でまゆかの手を強く握りながらふたりは鳥居を抜ける。
その瞬間、境内に群がっていた鳩がバサバサッと一斉に羽を広げて。まゆかは「わあー!」とつぐみの手を払って鳩に走っていった。
「こら!まゆか!」
追いかけようとするつぐみの肩を俺は叩く。
「平気だよ。暫く小鞠が時間を潰してくれるって」
小鞠の手には小さなボール。それをまゆかに見せるとまたきゃっきゃと嬉しそうに跳ねて、遊びはじめた。
「じゃ、行こうか」
俺がそう言うとつぐみは心配そうにまゆかのことを見つめていたけど小鞠がニコリと笑ったのを見て、やっとその足を前に進めた。
神社の外は下校中の学生がたくさんいて、友達と肩を並べながら買い食いをしたり、ファミレスに入ったり。
「お前は放課後にああやって遊んだりしねーの?」
交差点をすれ違う女子高生たちとつぐみは年齢は同じでもなにかが違う。
「遊ばないよ。ってかそんな暇ないし」
「暇……?」