心ときみの物語
そのレシートで買ったものはピンクの靴やリボンの髪留め。それにキャラクターの筆箱やえんぴつ。全てまゆかのものだってことはすぐに分かった。
だからつぐみは髪の毛も染め直さずにそのままにして、ピアスホールはあるのに可愛いピアスのひとつもしない。
自分はいつも後回し。
「私ね、まゆかの母親になるの」
デンモクを操作する手を止めて、つぐみが呟いた。
「お母さんがやってたことは全部やって。お母さんがいないからできなくなったとか、我慢させるようなことは絶対にしたくない」
「………」
「だから働いて働いて高校を卒業したらもっとお金を稼いで。高校や大学は好きなところに行かせてあげたいし、私がまゆかを守ってあげるの」
「………」
「だから父親はいらない。あんな父親なんて……」
「お前は母親にはなれねーよ」
俺がそう言うとつぐみはうつ向いていた顔をあげた。
「それをまゆかが望んでるとも限らねーし」
するとつぐみはガタッ!と勢いよく立ち上がった。